鋳造方案とは、溶湯を鋳型内部に導く経路のことをいいます。
鋳造方案の良し悪しは、鋳物の品質に大きく影響するので、原理原則に基づいて設計する必要があります。
鋳造の基本は「鋳造とは」の記事を参考にしてください。
他の鋳造法については、下記リンクの記事をご参照ください。
アルミ鋳物の基礎知識① アルミダイカスト(ダイキャスト)法とは
アルミ鋳物の基礎知識② 消失模型鋳造法【ロストキャスティング】
砂型鋳造の鋳造方案と役割を理解する
湯溜り(ゆだまり)
受け口ともいわれ、注湯を容易にして滓(かす)を浮かせるために湯口の上に設けられます。
湯溜りは、溶湯が直接鋳型内に入らないように、一時的に溶湯を溜めるもので、酸化物や介在物を浮かせるとともに溶湯が静かに湯口に流入させる役割を持っています。湯口の形状、低圧部のように仕切りを設けると介在物の混入を少なくできます。
湯口
溶湯に鋳型内に導く流路のことで、湯溜りから垂直になった部分をいいます。
湯口を落下する溶湯は、下にいくほど重力の影響で溶湯の落下速度が増すため、断面が細くなります。したがって、通常、湯口形状にはテーパが付けられています。もし、テーパが突いていないと湯口内に低圧部ができて空気を巻き込んでしまいます。
湯口底
垂直に落下する溶湯の勢いを止めて、流れをおだやかにする目的で付けられます。
湯口底は、落下する溶湯の流速を落として、湯の乱れを少なくするために湯口底の形状に示すように大きくします。湯口底の形状を、湯口底内で溶湯が回転して撹乱されるので注意が必要です。
湯道
湯口と堰(せき)との間を連結する水平になった溶湯の流路のことで、その先端を湯道先といい湯道内にかすやゴミを溜める役割もあります。
湯道は、鋳型空隙部に向かって流れる溶湯の速度を落として流れを静かにする役割があります。湯道の先端を湯道先といい、湯道内にかすや酸化物を溜める役割があります。湯道の途中に形状を設けて、ガスや酸化物などのかすを除去する方法もあります。
堰(せき)
湯道からの溶湯が鋳物部に流れ込む流路のことで、鋳型側を鋳込口ということがあります。
せきは、湯道から流れてきた溶湯を鋳型空間部に導く経路です。落込みぜき、段ぜき、押上ぜきは代表的なせきの形状を示します。鋳物の上段から流入させるもので落込みぜき(おとしこみぜき)といいます。鋳物の中段にせきを設けて溶湯を流入させるもので、縦に数段のせきを設けたものを段堰(だんせき)といいます。鋳物の下部から溶湯を流入させるもので押上ぜきといいます。
押湯
注湯された溶湯の凝固収縮によって不足する溶湯を補給するために、最後に凝固する位置につけます。
一般的に鋳型に鋳込まれた溶湯は、凝固を完了するまでに体積が凝縮します。凝縮する体積は、液体での収縮(液体収縮)と凝固時の収縮(凝固収縮)を合わせた分になります。代表的な鋳造合金の凝固時の収縮率を示します。黒鉛は凝固時に体積が膨張するので非晶鋳鉄(CE=4.3)は収縮率が0になります。
凝固収縮分を補うために押湯(おしゆ)を付けます。押湯の付け方を押湯方案といい鋳物の品質を左右します。押湯にはつける場所によって、直下押湯、側面押湯などがあります。直下押湯は溶湯補給を必要とする直上に設けます。側面押湯は鋳物の側面に設け、湯口や湯道に直結しているため押湯効率が良くなります。押湯が、鋳物の凝固した後に凝固すればひけ巣は発生しないことになります。
揚り(あがり)
鋳型内に湯が完全に満ちたことを確認するためにつけますが、ガス抜きの役割を兼ねる場合もあります。
ガス抜き
鋳型内の空気や鋳型から発生するガスを鋳型外部に逃がすためにつけます。
この他、中空部を形成するための中子、ひけが発生しやすいところや金属組織を微細にしたいところに金属製のブロックを当てて冷却を速める冷やし金などがあります。
砂型鋳造の鋳造方案の名称と役割 まとめ
- 湯溜り 注湯を容易にし、かすを浮かせるために湯口の上にもうけられる溶湯の受け口
- 湯口 溶湯を鋳型内に導く最初の流路。垂直にも設けられ湯道に接続する
- 湯口底 溶湯の流れをおだやかにするために湯口直下に設けられる半球状のへこみ
- 湯口 湯口とせきとの間を連結する溶湯の流路
- 湯道先 湯道の先端を行きづまりにして汚れた溶湯をためる
- 堰(せき) 湯道と鋳物部を結ぶ溶湯の流路
- 押湯 注湯された溶湯の凝固収縮によって不足する溶湯を補給する
- 揚り 鋳型内に湯が完全に満ちたことを確認する
- ガス抜き 鋳型内の空気・ガスを容易に逃がす
- 鋳枠 鋳型を作る場合に周囲を囲って鋳型砂を保持する金属もしくは木製の枠
引用参考文献:わかる! 使える! 鋳造入門 西 直美 (著)日刊工業新聞社
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