アルミ鋳物の製造でも用いられる、低圧鋳造法についてご説明いたします。
鋳造の基本は「鋳造とは」の記事を参考にしてください。
アルミ鋳物の鋳造法 低圧鋳造法とは
低圧鋳造法は、重力金型鋳造法と同様に金属でできた型を用いる鋳造法の一種です。低圧鋳造法は、密閉された保持炉の中に空気圧、あるいは不活性ガス圧を作用させて鋳込む鋳造方式です。主に、アルミニウムの鋳造に用いられます。
低圧鋳造法で製造された鋳物の主な用途
自動車のシリンダヘッドやホイール など
【他の鋳造法については下記の記事をご参照ください】
鋳物の基礎知識② 消失模型鋳造法とは【ロストキャスティング】
低圧鋳造法で用いる鋳造機
低圧鋳造法は、密閉したるつぼの上部に金型を設置し、るつぼ内の溶融金型と金型とをストークで連結して、溶融金属表面に0,01~0.1Mpaの空気圧を加え溶融金属をストーク内をとおして静かに上昇→金型内に充填します。そのため、ガスの巻き込みの少ない鋳物が得られます。ストークは、一般には鋳鉄製が多く用いられますが、最近ではセラミックス製に置き換えられつつあります。
また、金型は湯口から遠い部分の温度が低く、るつぼ側の温度が高いため湯口から遠い所から順次凝固させます。湯口部まで凝固した時点で、加圧を中止すると押湯となっているストーク内の溶融金属はるつぼ内へと戻ります。その結果、押し湯が不要なため、鋳造歩留りが非常に高く、95%前後といわれています。溶融金属をゆっくり金型内に充填するため、金型温度は300~400℃と高くします。
低圧鋳造法の金型
低圧鋳造法は、基本的には上下に開く2枚の金型(縦割り型)で構成されます。また、低圧鋳造では、自動車のシリンダヘッドなどのように製品内に中空部を形成する場合には、シェル中子が使用されます。
キャビティ部分には、SKD61などのダイス鋼が用いられ、キャビティ以外の金型部品には炭素鋼が用いられます。金型には、塗型が施されます。
低圧鋳造法のメリット・デメリット
低圧鋳造法のメリット・デメリットについて、それぞれ記載しています。
低圧鋳造法のメリット
- 押湯がないので、鋳物の鋳造歩まりが高い(90%以上)
- 砂中子を用いた薄肉の複雑形状の鋳物ができる
- ひけ巣やガス欠陥などの内部欠陥が少ない
- 砂型鋳造や重力鋳造に比較して寸法精度が高い
- 鋳造材料の範囲が広い
- ダイカストより設備費が安い
- 自動化しやすい
低圧鋳造法のデメリット
- ストークをとおしての溶湯供給が、押湯を兼ねるため、湯口の位置や数が制約され、重力鋳造に比べて自由度が少ない
- 金型温度が高いため、鋳造サイクルが長い
- 保持炉内で溶湯の上下があるため、介在物生成やガス含有の可能性が高い
引用参考文献:わかる! 使える! 鋳造入門 西 直美 (著)日刊工業新聞社
【低圧鋳造法のまとめ】
低圧鋳造法は、密閉された保持炉内に、0.01~0.1Mpaの空気圧を作用させて溶湯を鋳込みます。溶湯が凝固した後、保持炉内を大気圧に開放して製品部以外の未凝固の溶湯がるつぼ内に戻るので歩留りが良いことが特徴です。
当社では、低圧鋳造法をはじめ様々なアルミ鋳造方法の実績がございます。お客様のご要望をお聞きした上で、最適な鋳造方法をご提案いたしますので、是非一度ご相談ください。