アルミ鋳物・アルミ鋳造とは
アルミ鋳物(いもの)とは、原料となるアルミニウム合金を高温で溶かし砂型や金型、ロストワックスなどの鋳型(いがた)に流し込んで製造(鋳造)するアルミ製の製品を指し、アルミキャストとも言われます。
アルミ鋳造(ちゅうぞう)とは、アルミニウム合金を溶かして鋳型の中に鋳込んで冷やして固めるプロセスで、基本的には溶かせる材料であればなんでも鋳造することができます。(アルミ以外では鉄や錫が代表的です)
※この記事は2023/09/01 修正・更新しました。
アルミ鋳物は、電気伝導性、熱伝導性、耐食性に優れています。
さらに、軽量であることから、自動車部品や航空機部品、一般機械、船舶用などの大きなものから、アクセサリーや装飾目的の小さな物まで幅広く適応されています。
リサイクル性にも優れており、外観も美麗という特徴があります。
アルミ鋳物の主な用途例)シリンダブロック、トランスミッションケース、シリンダヘッド、エンジンマウントブラケット、コンバーターハウジング、エスカレーターステップ、ガーデンチェア・ベンチ、門扉、フェンスなど
アルミ鋳物の原料(アルミニウム合金)とは
アルミニウム合金の特性
アルミニウムは密度が270g/㎤と低く金属の中でも軽量の方です。
融点は660.3℃、電気・熱伝導に優れ、展延性に富んでいます。
アルミニウムは表面緻密な酸化被膜を形成する為、耐食性に優れています。
鋳造の基本はこちらの記事を参考にしてください。
アルミニウム合金の種類と特性・用途
アルミニウム合金の種類と特徴、用途をそれぞれ解説いたします。
アルミニウム合金は、Al-Cu系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金に大別されます。
Al-Cu系合金
Al-Cu系合金には、Al-Cu-Mg系合金、Al-Cu-Si系合金、Al-Cu-Ni-Mg系合金があります。
- Al-Cu-Mg系合金 強靭性に優れている。切削性が良く電気伝導性に優れるので、自転車用部品、航空機用油圧部品などに利用される。
- Al-Cu-Si系合金 機械的性質、鋳造性、非削性、溶接性が優れるので、シリンダヘッドやマニホールド、足回り部品などの自動車部品などに利用される。
- Al-Cu-Ni-Mg系合金 高温強度、切削性、耐摩耗性に優れ、冷却シリンダーヘッド、航空機用エンジン部品などに利用される。
Al-Si系合金
Al-Si系合金には、Al-Si系合金、Al-Si-Mg系合金、Al-Si-Cu系合金、Al-Si-Cu-Mg系合金、Al-Si-Cu-Ni-Mg系合金があります。
Al-Si系合金は、流動性がよく、耐食性・溶接性に優れますが、機械的性質・被削性に劣り、ケース類やカバー類などの薄肉、複雑な形状の鋳物に使用されます。
Al-Mg系合金
Al-Mg系合金は、ヒドロナリウム(Hydronalium)とも言われ、耐食性(特に耐海水性)に優れる材料です。機械的性質、特に靭性に優れ、切削性も良いです。しかし、Siが添加されていないので、鋳造性はよくありません。船舶部品、食料用器具、化学用部品などに使用されます。
このように、アルミ合金には多様な種類があり、「強く、美しく、耐久性のあるアルミ鋳物」を制作する上で、製作したい形状や用途に合わせた原材料選びは非常に重要な作業工程となります。
そのために、当社ではお客様の要望をしっかりとヒアリングした上でアルミ合金の適合性を吟味し、ご提案させていただきます。
まとめ
- アルミニウム合金は、電気伝導性、熱伝導性、耐食性にすぐれ軽量である。
- 自動車用をはじめ、一般機械、船舶用など様々な部品に適用されている。
- ほとんどの鋳造法に適応される。
当社では、数多くのアルミ鋳物原料(アルミ合金)を取り扱っております。お客様のご要望をお聞きした上で、最適なアルミ鋳物原料をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
合金系 | JIS記号 | 特徴 | 主な用途 | ||||||||||||
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Al-Cu-Mg系 | AC1B | 機械性質・切削性に優れる。耐食性・鋳造性に劣る。 | 架線用部品・重電機部品・自転車用部品・航空機用部品 | ||||||||||||
Al-Cu-Si系 | AC2A、AC2B | 鋳造性がよく、引張強さが高いが伸びは低い | マニホールド・デフキャリア・ポンプボディ・シリンダヘッドなど | ||||||||||||
Al-Si系 | AC3A | 流動性が良く、耐食性、溶接性に優れる。機械的特質、被削性に劣る。 | ケース・カバー・ハウジングなど。複雑形状の部品など。 | ||||||||||||
Al-Si-Mg系 | AC4A、AC4C、AC4CH | 鋳造性、耐食性、強度、靭性に優れる。 特にAC4CHは不純物を抑えた規格のため、改良処理、熱処理により非常に高い伸びを示す。 |
マニホールド・ブレーキドラム・ミッションケース・クラッチケース・ギヤボックスなど。AC4CHは自動車のホール・航空機用エンジン部品など。 | ||||||||||||
Al-Si-Cu系 | AC4B | 耐食性に劣るが、鋳造性に優れる。引張強さは高いが、伸びは低い。 | クランクケース・シリンダヘッド・マニホールドなどの自動車用部品、航空機用電装部品など。 | ||||||||||||
Al-Si-Cu-Mg系 | AC4D | 鋳造性に優れ、機械的性質も良い。耐圧性が必要な部品に適する。 | 水冷シリンダヘッド・クランクケース・シリンダブロック・燃料ポンプボディなど。 | ||||||||||||
Al-Cu-Ni-Mg系 | AC5A | 高温強度、切削性、耐摩耗性に優れるが、鋳造性が低い。 | 空冷シリンダヘッド・ディーゼル機関用ピストン・航空機用エンジン部品など。 | ||||||||||||
Al-Mg系 | AC7A | 耐食性、機械的性質、切削性に優れるが鋳造性はよくない。 | 架線金具・船舶用部品・事務機器・航空機用電装部品など。 | ||||||||||||
Al-Si-Cu-Ni-Mg系 | AC8A、AC8B、AC8C | 熱膨張係数が小さく、耐摩耗性、耐熱性に優れる。鋳造性が良好である。AC8CはNi無添加。 | 自動車用ピストン・プーリ・軸受など | ||||||||||||
Al-Si-Cu-Ni-Mg系 | AC9A、AC9B | 耐熱性、耐摩耗性に優れ膨張係数が小さい。 | ピストン・空冷シリンダなど。 |
引用参考文献:わかる! 使える! 鋳造入門 西 直美 (著)日刊工業新聞社